21話。高倉兄弟。晶馬一人称。
両親がいた頃の喧嘩は全部相手が冠葉だった。
そして、両親がいなくなってからした喧嘩は、冠葉以外が相手だった。
殴り合いの喧嘩をするのなんて、数年ぶりだった。
最後に冠葉と喧嘩をしたのは、まだ両親がいた頃で、原因も勝敗も忘れてしまった。きっとどうでもいい理由で始まった喧嘩だったんだろう。
両親がいなくなり、僕たちには犯罪者の子どもというレッテルが貼られた。
ある日、知らない先輩たち数人にからまれて、僕は殴られた。
たぶん、理由なんてなくて、誰かを殴りたいときに目の前にいたのがちょうどいい僕だったのだろう。
憎むべき犯罪者の子ども。だから、殴ってもいいだろう。そう思われたのだ。
悔しくても抵抗もできなくて、ただうずくまって嵐が過ぎるのを待つ。
そのとき、僕の名前を呼ぶ声が聞こえた。冠葉が足音高く走ってくるのが見えた。
冠葉は先輩たちを殴ると、僕をかばうように立ちふさがる。
おいおい、お兄ちゃんに助けてもらうのかよ。二人なんてずるいんじゃねーの。
先輩たちは向こうのほうが人数が多いくせにうそぶく。
冠葉はけっと唾をはくと、うるせえ、と吠えた。
「俺たちは双子だから」
喧嘩の相手も二人でするんだ、と叫ぶ。
そして二人で先輩たちをぼこぼこにしたのだ。僕たちもぼろぼろになったけれど。
帰ったら陽毬に手当てをしてもらった。陽毬は何も聞かなかった。
その後は、二人でどんな喧嘩にも立ち向かったんだ。
なのに、どうしてこんなことになったんだろう。
「俺たちは同じ日に生まれた、赤の他人だろ」
冠葉が遠い。