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ノスタルジア

「輪るピングドラム」の二次創作小説ブログサイトです。 公式の会社・団体様とは無関係です。

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SS2

転生後、別れ話をする晶苹。

「じゃあね」
そう言って晶馬は微笑んだ。
いつも通り、ちょっと困った笑顔になってしまっているであろうと予想はついた。
どうしていつもそんな風に笑うの、と苹果に怒られたことを思い出す。
もっと堂々と笑いなさいよ。だからいつもへらへらしてるやつだって言われるのよ。あなたはいつも、どうしてそうなの。
いらいらとして叫んだ苹果に、売り言葉に買い言葉で思えばずいぶんひどいことを言った。
君だってすぐに感情のメーターが振りきれるじゃないか。どうしてもう少しおしとやかにできないんだよ。
そして、陽毬はもっと、と言って彼女の地雷を踏んでしまった。
一度言った言葉は取り消せない。
いくら話し合っても、もうお互いを貶める言葉しか出てこなかった。
別れよう。
晶馬がしぼり出した言葉に、苹果が小さく頷いた。
どこかでボタンをかけ違ってしまっだけなのはわかっている。
だが、ボタンを全て外してかけなおすには、二人とももう疲れてしまったのだ。
うつむいていた苹果が、顔をあげて晶馬をじっと見つめた。
「……うん」
涙をためているその顔は、いつもエネルギッシュな彼女らしからぬ表情だった。
見たことのない彼女の顔に、心臓が音を立てた。
急に鼓動が早くなる。晶馬をせきたてるように。いいのか、本当に、と言っているようだった。
いいはずだ、これが最善のはずだ。だって僕たちは、これ以上一緒にいても傷つけあうだけなんだから。
そう思った矢先、苹果が晶馬の服をつかんだ。雨が降り始めるときのように、ぽたりと雫が落ちるのが見えた。
苹果の眼からこぼれ落ちた、涙だった。
「だめ、だと思う」
「え?」
「よくわからないんだけど、胸の中で誰かが叫んでいるみたい。だめだって」
「何を言って」
「だから、わからないんだってば」
必死な苹果の様子に、晶馬は戸惑いながら返す。
「……離れたほうがいいって、言ったじゃないか。一緒にいても傷つけあうだけだって」
ああ、責める口調になってしまった、と思ったときには、苹果がきっと顔をあげた。
「わかってる!頭ではわかってるし、今でもそう思ってるわよ!でも!」
苹果がぼろぼろと涙を流す。
「なんで……止まらないのよぉ……」
そのまま、しゃくりあげてしまう。
晶馬はつい、いつものように彼女の肩を引き寄せた。
引き寄せてしまえば、よくこの肩を放すことができたな、と思う。
「きっとまた、同じことがあるかもしれないよ」
「うん」
「すれ違って、傷つけあって、また泣くかもしれないよ」
「うん」
それでも。
「だって私たち、同じ世界にいるんだもの」
苹果の言葉が晶馬の胸にすとんと落ちた。
あとから二人で確認し合ったときには、意味がわからなくてお互い首をかしげたのだが、そのときには妙に納得したのだ。
「同じ世界にいるから、すれ違えるし、傷つけあえる。喧嘩もできるの」
「……仲直りもできる?」
「うん」
「やり直すこともできる、かな……」
「うん」
ごめん、と呟いた声に、苹果が首を振る。そうじゃないでしょ、と口をとがらせる。
晶馬はいつもの少し困った笑顔で言う。
「ありがとう、愛してる」

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