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ノスタルジア

「輪るピングドラム」の二次創作小説ブログサイトです。 公式の会社・団体様とは無関係です。

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SS6

晶馬と苹果。花火大会。
ツイッターで呟いたものをまとめました。

「陽毬ちゃーん!」
 声を張り上げても喧騒にかき消されてしまう。
周りのおしゃべり、携帯の着信音、笑い合う声が、分厚い壁のようで途方に暮れた。
はぐれちゃった、とつぶやいた言葉は最早自分の耳にもよく聞こえない。
中学生の彼女はまだ携帯を持っていない。あんなに可愛い子を一人にして大丈夫だろうか。
花火大会の会場は、少し見まわしただけでもガラの悪そうな人も多い。早く合流しなきゃ、と気ばかりはやる。
楽しく笑いあって一緒に着付けをした浴衣が、今は動きにくくて煩わしい。特に履きなれない下駄の鼻緒が指に食い込んで痛かった。
とにかく、はぐれたと思われるところに行かなくては、と人をかき分けようとするが、うまくいかない。
もうすぐ花火が打ち上がる時間なので、みんな移動をやめてここで立って見ようとしているらしい。
無理矢理動こうとしている苹果を、カップルが睨みつけてくる。
気の強い苹果は更に睨み返しつつも、すいません!と言って一歩踏み出した。
出した足を降ろそうとした瞬間、誰かの靴を踏む感触がした。慌ててよけようとして、バランスを崩す。きゃ、と声が上がる。そのとき、腕を強い力で引かれた。
「大丈夫?」 静かな男の子の声だった。喧騒は続いているのに、妙にその声はすっと耳に入ってきた。
苹果が振り向こうとした瞬間、ぱあんという音がした。
暮れて闇一色だった空が明るくなる。苹果は始まった花火へと視線を移した。
赤や緑の光が夜空に花を咲かす。
「わあ、きれい」
思わず言ってしまったあと、お礼が先じゃない、と思う。
ありがとう、と口を開こうとしたときに、傍の男の子のほうが先に言った。
「君と花火が見たかったんだ。よかった」 少年の声に聞き覚えはない。初対面なのに変な人、と思う。
だが、悪い気はしなかった。
「なあにそれ、ナンパ?」
彼の顔を見たら負けのような気がして、再び花火を見つめながらそう言った。隣でくすりと笑う気配がする。
「そうかもね」
優しく言う声がした。
ストレートな物言いに、思わず心臓が跳ねる。
「……口説き方、下手ね」
負けず嫌いな性分が出て、少し意地を張りながらとうとう彼の顔を見上げようと横を向いた。
あれ、と思わず声が出た。そこには人一人分の空間があるだけだった。腕をつかんでいたはずの温もりも何時の間にかなくなっていた。
「……?」
首を傾げていると、苹果ちゃん!という声がした。陽毬の声だ。
慌てて周りを見ると、人ごみの合間から彼女が必死にジャンプしてこちらに顔をのぞかせていた。
「陽毬ちゃん!よかったあ!」
「どうしようかと思っちゃった。会えてよかった」
陽毬の笑顔に駆け寄り、お互いに安堵しながらも、苹果は先程までの出来事に思いを馳せる。
「ねえ陽毬ちゃん、私の近くに誰かいなかった?」
「え?たくさんいたけど」
「うーん、そうなんだけど、そうじゃなくて。誰だったのかな」
苹果は首を傾げたが、新たな花火が打ち上げられて、すぐにそちらに興味を奪われた。
「きれいだねー、苹果ちゃん!」
「うん!」
「こんなにたくさん人がいるのは、みんな大切な人と見たいからだろうね」
「そうだね。花火は大切な人と見ないとね」

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